伊達さまの親キリシタン的ご謀反を描いたフィクションなどについて
この伊達政宗さまのキリシタン勢力を味方に付けて、いまだ確立途上の徳川幕府体制を打ち壊そうとしたご謀反のお話は、正史に記されるようなものではございません。しかし、何人かの作家の方々は、その雄大な世界史的謀略に刺激を受け、時代劇的なフィクションを書いておられます。
最初は志茂田景樹先生の「独眼竜政宗 最後の野望」講談社文庫でございます。昭和49年の伊達政宗様の墓所の学術調査が行われた折、副葬品から黄金製のロザリオが発見されたところから書き起こし、片倉小十郎重長を語り部として1冊の書にまとめてございます。ここでは歴史の流れ通り、伊達さまのご謀反は表に現われず、密かに歴史の闇に葬られてまいるのであります。
もうひとつの作品は工藤章興先生の書かれた「秘 独眼竜戦記」で全4巻、1から4まで「決断」「暗闘」「激闘」「殲滅」と副題が付けられた堂々の大河小説であります。こちらは大坂冬の陣から夏の陣の間に、徳川秀忠が父の家康を暗殺し・・・、というあたりから歴史仮想戦記の色彩をどんどん濃くしてまいります。
仙台城を舞台とした伊達軍と秀忠軍の激戦が続く中、支倉常長がイスパニア艦隊を率いて仙台の沖合に現われ、松平忠輝が江戸城を乗っ取ります。駿府城に立て籠もった秀忠さまは、伊達さまを中心とした討幕軍に攻められ、討ち死になさいます。(秀忠さまは本当に人気も人望もないですなあ。歴史小説の世界では)豊臣家は武家ではなく公家として存続し、最後に日本に遠征してきたイスパニア艦隊は伊達水軍に殲滅されるのでありまする。おお、なんたるサービス精神でありましょうか。
これを単なる小説家のたわごとと思うお方も多いことでございましょう。しかし、歴史とはその時代に生きていた方々が自ら選び取った道筋の足跡でございます。
もし伊達さまのご謀反が成っていたら、今の世がどんな世の中になっていたか、つらつらと長い長い時間軸で考えることは決して無駄なことではないと思うのでございます。20180116